大腸憩室炎
目次
大腸憩室炎とは
大腸憩室炎とは、大腸の壁の一部が袋状に突出した「憩室」に炎症が起こった状態を指します。
日本では40〜60歳代に右側結腸(盲腸や上行結腸)に多く、高齢になるにつれて左側結腸(S状結腸や下行結腸)での発症が増えます。
憩室は加齢、食生活、便秘、遺伝的素因などにより形成され、炎症が軽度であれば保存的な治療が可能ですが、重症化すると穿孔や膿瘍を伴い、外科的治療が必要になることもあります。
大腸憩室炎の原因
大腸憩室炎の発症には、以下の要因が関与していると考えられています。
腸管内圧の上昇
便秘や硬い便によって腸の内圧が高まると、腸の壁の弱い部分に袋状の憩室が形成されやすくなります。
さらに、その憩室内に便がたまることで細菌が繁殖し、局所的な炎症を引き起こすことがあります。
腸の動きが悪い状態が続くと、発症リスクが高まります。
加齢と遺伝的要因
年齢を重ねると腸の壁が弱くなり、憩室ができやすくなります。
特に高齢者では左側の大腸に憩室が多く見られます。
また、家族に憩室炎を発症した人がいる場合、遺伝的な体質も関与している可能性があり、発症リスクが高くなると考えられています。
薬剤(NSAIDsやアスピリン)
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やアスピリンなどの抗血小板薬は、腸管粘膜を障害しやすく、憩室炎の発症や悪化の要因になると報告されています。
これらの薬を継続的に使用している人では、炎症や出血を起こすリスクが高くなると考えられています。
大腸憩室炎の症状
腹痛
大腸憩室炎で最も頻度の高い症状です。炎症の部位によって、右下腹部(盲腸や上行結腸)や左下腹部(S状結腸)に痛みが現れます。
初期には鈍い痛みから始まり、次第に持続的で強い痛みに変わることが多く、腹部を押すと痛み(圧痛)を感じます。
炎症が進行すると、「反跳痛(はんちょうつう)」と呼ばれる所見が出ることがあります。
これは、お腹を軽く押した後、手を急に離したときに、押したとき以上に強い痛みが出る現象で、腹膜炎の兆候として重要です。
反跳痛がみられる場合は、穿孔などの重症憩室炎が疑われ、速やかな精査・対応が必要となります。
発熱
軽症では発熱がないこともありますが、炎症が進行すると38℃を超える高熱となることがあります。
特に膿瘍や穿孔などの合併がある場合は、発熱が持続し、全身状態の悪化をきたすこともあります。
発熱があるかどうかは、病気の重さを判断する手がかりになります。
消化器症状
腸管の炎症によって、便秘や下痢、腹部膨満感、ガスがたまる感じなどが出現します。
また、炎症が広がることにより悪心・嘔吐、食欲不振を伴うこともあります。
腸の動きが悪くなることで腸閉塞に近い症状が現れることもあり、注意が必要です。
全身倦怠感
大腸憩室炎では、局所症状だけでなく全身の倦怠感や脱力感を伴うことがあります。
特に高齢者では症状が非典型的となりやすく、「なんとなく調子が悪い」という訴えから発見されることもあります。
体温や脈拍、血圧などの体の状態をこまめに確認することが大切です。
大腸憩室炎の検査・診断
大腸憩室炎は急性虫垂炎や虚血性大腸炎、感染性腸炎などとの鑑別が必要となります。
また、腸に穴があく穿孔やお腹に膿がたまる腹腔内膿瘍があるかどうかが、治療方針を左右します。
問診・診察
まず、現在の症状の有無や痛みの場所、発熱の有無、便通の変化などを詳しくうかがいます。
診察では、お腹を触って圧痛や反跳痛の有無を確認し、聴診器で腸の動きを確認します。
重症化のサインがある場合には、すぐに詳しい検査を行う必要があります。
血液検査
体内に炎症があるかどうかを調べるために血液検査を行います。
特に白血球の数や、CRP(C反応性たんぱく)という炎症の程度を示す値を確認します。
これらの数値が高い場合、憩室炎を含めた何らかの炎症が進行している可能性が考えられます。
造影CT検査
大腸憩室炎が疑われるとき、最も重要な検査の一つがCTです。
腸のどの部分に炎症があるか、膿がたまっているか(膿瘍)、あるいは腸に穴があいているか(穿孔)などを詳しく確認できます。
また、憩室炎と似た症状を起こす他の病気や、大腸がんとの見分けにも役立ちます。
大腸内視鏡検査
急性の炎症がある時期には行わないことが多いですが、炎症が落ち着いた後に、大腸内視鏡検査を行うことがすすめられます。
これは、大腸がんやポリープなどが腹痛などの症状の原因ではないかを確認するためです。
特に、初めて大腸憩室炎を起こした方や、年齢が高い方では重要な検査です。
大腸憩室炎の治療
大腸憩室炎の治療は、炎症の程度に応じて異なります。
軽症の場合
穿孔や膿瘍の合併がない場合は、腸を安静に保つことと、症状をやわらげる治療(対症療法)が中心となります。
必要に応じて抗菌薬を投与します。
食事や水が取れて全身状態が安定している場合は、外来での治療も可能です。
中等症〜重症の場合
膿瘍や穿孔がある場合には入院治療が必要になります。
膿瘍が3cm未満の場合
抗菌薬による治療が一般的です。
3〜5cmの膿瘍
お腹にたまった膿を針などで体の外から抜く「ドレナージ」という処置が検討されます。
5cm以上の大きな膿瘍
CTや超音波を使って膿を正確に確認しながら、安全に抜く処置が必要です。
ドレナージ無効や穿孔例
症状の原因となっている大腸の一部を切除する手術が検討されます。
重症の場合(汎発性腹膜炎)
腸に穴があいて便が腹腔内に漏れてしまうと、強い腹膜炎(お腹の中全体に炎症が広がる状態)になります。
このような場合は命に関わるため、すぐに手術が必要です。
手術では炎症のある腸を切除したり、場合によっては一時的に人工肛門をつくる処置が行われることもあります。
大腸憩室炎の予防
現在、大腸憩室炎を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、いくつかの生活習慣が予防に役立つと考えられています。
まず、便秘を避けて腸に負担をかけすぎないことが大切です。
便秘を防ぐためには、野菜や果物など食物繊維を含むバランスの良い食事、十分な水分摂取、そして適度な運動を心がけましょう。
また、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やアスピリンなどの薬を常用している方は、これらが憩室炎の発症や再発のリスクになることがあるため、主治医と使用の継続について相談してください。
さらに、喫煙や肥満も憩室炎の危険因子とされており、禁煙や体重管理も予防に有効です。
憩室炎は一度よくなっても再発しやすいため、日頃から腸に優しい生活習慣を意識することが大切です。
草加西口大腸肛門クリニックでの【大腸憩室炎】の診療
当院には、「急にお腹が痛くなった」「熱が出た」「便通の異常がある」といった症状で来院される方が多くいらっしゃいます。
大腸憩室炎は、これらの症状の原因として比較的頻度の高い病気のひとつです。
まずは問診とお腹の診察を行い、憩室炎が疑われる場合は血液検査を行い、炎症の程度を確認します。
必要に応じてCT検査が可能な医療機関へご紹介し、膿瘍や穿孔の有無を評価します。
軽症であれば外来での治療が可能であり、腸を安静に保つことや抗菌薬の内服を中心に、食事指導などを通じて経過を見ていきます。
一方、症状が強い場合や、膿瘍・穿孔の疑いがある場合には、連携している総合病院にて精密検査や入院治療をお願いしています。
また、炎症が落ち着いた後には、大腸がんなどの重大な病気が隠れていないかを確認するため、大腸内視鏡検査をおすすめすることがあります。
「突然の腹痛が気になる」
「以前にも似たような症状があった」
「市販薬ではなかなか良くならない」
など、不安や違和感がある場合には、お早めにご相談ください。
当院では、患者さんの状態に応じた的確な診療と、安心して治療を進められるようなご案内を心がけています。