肛門科
おしりの病気について
当院での治療方針
おしりの3つの代表的な病気(いぼ痔、切れ痔、痔瘻など)は、命に影響のある『がん』(悪性疾患)と違って、命を取られることのない病気(良性疾患)です。
そのため、いぼ痔・切れ痔・痔瘻があるからといって、必ずしも手術をする必要はありません。
患者様が、おしりの病気が原因で、生活に支障が生じて困っている場合で、患者様が手術を希望された場合に、初めて手術という選択肢が出てきます。
当院を受診された患者様で、実際に手術が必要になった方は1割以下です。
診察では、お話をよくお伺いし、その後におしりの診察をして、診断名をお伝えし、その上でそれぞれの患者様のニーズに合わせた治療方法をご提案いたします。
おしりの診察のながれ
完全個室の清潔な診察室で、
【問診】→【おしりの診察】→【説明】の順で診察を行います。
必要に応じて、肛門エコーなどの検査や処置を行います。
問診
現在一番困っている症状などについて詳しくお伺いいたします。
また、現在治療中のご病気や飲んでいるお薬などについてもお伺いいたします。
おしりの診察
靴は脱いでいただき、カーテンの中で、ズボンや下着をおしりが見えるまで下ろしていただきます。
診察台には使い捨ての清潔なシーツ敷いてあり、近くにも一枚置いてあります。
まずは、診察台に敷いた使い捨ての清潔なシーツの上に左下横向きになっていただきます。
その後、おしり上からもう一枚の清潔なシーツをかけていただき、写真のように膝を抱えるような姿勢をお取りいただきます。
指診および肛門鏡という小さな器械による診察を行います。所要時間は1-2分程度です。
その後必要に応じて、肛門エコーや処置を行います。
説明
診察の後に丁寧に病状の説明をし、診断名をお伝えいたします。
その上で、患者様のお話をよくお伺いし、患者様とよくご相談をしながら、それぞれの患者様のニーズに合わせた治療方法をご提案いたします。
おしりの手術については、患者様がおしりの病気が原因で生活に支障が生じて困っていて、なおかつ、患者様が手術を希望された場合に、初めて手術という選択肢が出てきます。
しっかりとした診断を行い、患者様の立場に立って、本当に手術が必要な方に手術をお勧めする。
これが当院が所属するきよし会の信念です。
そして、本当に手術が必要な方の場合は、本院の西新井大腸肛門科での手術をご案内いたします。
肛門エコー
問診、おしりの診察の後に必要に応じて肛門超音波検査(肛門エコー)を行います。
肛門に痛みがある場合には、おしりの表面からは見えない部分に炎症や膿(うみ)のたまり(肛門周囲膿瘍)があることがあり、肛門エコーを使うことでより正確な診断が可能です。
また、肛門エコーを使うことで、痔瘻の確実な診断も可能です。
当院では、HITACHI ALOKA製のNoblusを導入いたしております。
処置
おしりの周囲に炎症が起こり、膿(うみ)がたまった状態を肛門周囲膿瘍といいます。
初期の肛門周囲膿瘍であれば、抗生物質で改善することもありますが、膿のたまりが多くなった場合は放置すると敗血症など重症化する可能性もあるため、膿を出す処置が必要となります。
膿のたまりが少ない場合や皮膚の近くに膿がたまっている場合は、外来で局所麻酔での膿を出す処置が可能ですが、膿のたまりが多い場合や、深い位置に膿がたまっている場合には、入院の上での処置が必要になることがあります。
入院での処置が必要な場合には、本院の西新井大腸肛門科の受診をご案内いたしております。
このように、外来と入院のどちらの治療にも対応できるのが当院の強みです。
当院であつかっている
おしりの病気
痔核(いぼ痔)
まず最初に、小さないぼ痔(内痔核)は誰にでもあります。
いぼ痔(痔核)は、歯状線という構造を境にして、中にできるタイプ(内痔核)と外にできるタイプ(外痔核)に分けられます。
肛門は括約筋(肛門を締める筋肉)と肛門クッション(肛門のすき間を埋める構造)という仕組みで、便やガスの漏れを防いでいます。
肛門クッションは毛細血管や結合組織でできていて、この肛門クッションが小さな内痔核です。
小さな内痔核は誰にでもあり、肛門の機能を保っている大切な構造物です。
痔があるからといって、必ずしも手術をする必要はありません!
そして、痔を放置しても癌にはなりません!
手術の決め手になるのは、あなたが、その『痔』があることによって、困っているかどうかです。
内痔核は、固い便や強いいきみなどの刺激により、腫れたり、うっ血したりします。
その結果、便が通る時にこすれて出血したり、ひどくなると肛門の外に脱出するようになります。
内痔核がお尻から飛び出てきて戻らないと、うっ血して痛みの原因となります。
また、痔からの出血がひどいと貧血になることもあります。
内痔核の治療の基本は、排便習慣や食習慣の改善が重要で、それに加えて軟膏や飲み薬での治療を行います。
それでも脱出や出血などの症状がよくならず、生活に支障をきたしている方の場合に、はじめて手術も検討されます。
「排便のたびに飛び出てきて指で押し戻すのは嫌だな...」
「最近排便のときに脱出して、出血もするからなんとかしたいな...」
「運動をすると飛び出てきてなかなか戻らず痛みもあり、運動に集中できなくて困る...」
痔に伴う様々な症状でお困りの場合は、手術を受けることのよって生活の質は向上します。
一方で、排便のたびに毎回いぼ痔がおしりから飛び出てきて指で押し戻していても、本人が困っていなければ、手術の必要はありません!
手術の場合は時間や費用の負担が発生します。
麻酔や手術に伴う偶発性(副作用)もゼロではありません。
私たちは「痔があるから手術をしましょう」と手術をお勧めすることは決してありません。
手術をすることにより、痔に伴う症状が改善し。あなたの悩みが解決できる場合に、初めて手術をご提案いたします。
長年痔による症状でお悩みの方、本当に手術をしたほうがいいかお困りの方は是非一度ご相談ください。
手術の場合は、基本的には本院の西新井大腸肛門科での入院手術をご案内いたしております。
もう一つのいぼ痔である外痔核は、痔の中に血の塊(血栓)を作り、強い痛みを伴うことがあります。これを血栓性外痔核と言います。
血栓性外痔核は、基本的に手術をする必要はなく、軟膏や内服による治療で自然に改善していきます。
しかし、痛みが強いと生活に支障をきたしますので、痛み止めの内服も必要となります。
同じように痛みを伴う病気に肛門周囲膿瘍があり、血栓性外痔核との判断が難しい場合があります。
肛門周囲膿瘍の場合は、自然に改善しないことが多く、抗生剤の内服や膿を出す処置が必要となりますので、おしりが腫れて痛みを伴う場合は、一度クリニックを受診してみてください。
裂肛(切れ痔)
肛門の容量を超えるような硬い便を、無理やり出しときなどに肛門の上皮が裂けてしまった状態です。
出血は紙に着く程度のことが多く、非常に強い痛み伴うこともあります。
切れ痔の程度が軽い場合は、便を軟らかくするなどの排便習慣の改善や、軟膏などの使用により痛みや出血の症状は改善します。
痛みが強い方の場合は、治療の最初に痛み止を飲んでいただく場合もあります。
しかし、何度も同じ場所が切れて切れ痔が慢性化すると、常に痛みを伴ったり、肛門が狭くなってしまうこともあります。
長年の切れ痔で生活に支障をきたしていて、便通のコントロールや軟膏などの治療ではなかなか症状が良くならない場合には手術も検討されます。
切れ痔の治療は、まずは排便コントロールと軟膏や飲み薬です。いきなり手術をお勧めすることはありませんので、まずはクリニックでご相談ください。
痔瘻・肛門周囲膿瘍
肛門の少し奥には粘液を分泌する穴が放射状に並んでます。
ここから粘液を分泌することで適度な湿り気を保ち、便の通りをスムーズにする働きがあります。
この穴から細菌が侵入して炎症を起こすと、化膿してしまうことがあり、この状態を肛門周囲膿瘍といいます。
初期の炎症が中心の場合には、抗生剤で症状が改善することもありますが、膿のたまりができてしまった場合には、強い痛みと腫れが常にある状態となり、生活に支障が生じたり、場合によっては敗血症などの重傷な状態となることもあるため、切開して膿を強制的に出す処置が必要となります。
「おしりの周囲が腫れて痛い!」という方は、膿がたまってしまっている可能性があるため、早めにクリニックを受診してください!
肛門周囲膿瘍を繰り返すと、細菌の入り込む穴から膿のたまる部分を通り、さらに皮膚までつながる道ができてしまうことがあり、この状態を痔瘻と呼びます。
痔瘻はいったんできてしまうと自然に治ることはなく、完治のためには、手術が必要となります。
また、複雑な痔瘻を長年放置すると、炎症を背景に癌が発生することがあります。
長年痔瘻を放置している方は、現在の状況を評価し、しっかりとした診断をつけるためにも、一度クリニックを受診してみてください。
肛門周囲湿疹
おしりの皮膚があれることによって、かゆみや痛みが出ます。
通常は生活習慣の改善やステロイド入りの軟膏の軽快することが多いのですが、カンジダをはじめとした菌が原因の場合は、治療する薬剤が変わります。
日頃から痛痒さが強く、市販薬などを使用してもなかなか改善しない場合は一度クリニックを受診してみてください。
その他のおしりの病気
- 肛門感染症
- 直腸脱
- 粉瘤