便秘症
目次
便秘症とは?
便秘症とは、排便の回数が少ない、排便が困難である、または便が硬くてスムーズに出ない状態が継続する病態を指します。
日本消化管学会の「便通異常症診療ガイドライン2023」によると、便秘とは「排便の回数が減少することだけでなく、排便に困難を伴う状態」と定義されています。
さらに、これが慢性的に続く場合を「慢性便秘症」といいます。
健康な排便リズムは個人差がありますが、一般的には週に3回未満の排便しかない場合や、排便に強くいきむ必要がある場合、排便後にすっきりしない場合は便秘症と診断されることがあります。
日本での便秘症の状況
便秘症は日本において一般的な疾患であり、多くの人が経験する消化器症状の一つです。
「便通異常症診療ガイドライン2023」によると、慢性便秘症の有病率は約10〜15%とされており、特に女性や高齢者で有病率が高いことが知られています。
性別による違いでは、女性は男性の約2倍の頻度で便秘を訴えることが報告されています。これは、女性ホルモンの影響や腸の蠕動運動の違いが関与していると考えられています。また、妊娠中や閉経後に便秘が悪化しやすいことも特徴です。
年齢との関係では、高齢者になるほど便秘のリスクが上昇します。
特に65歳以上の高齢者では、腸の運動機能の低下、水分摂取不足、運動不足、服用薬剤(降圧薬、抗うつ薬など)の影響が便秘の発症に関与します。
便秘症はQOL(生活の質)の低下にも大きく関わり、仕事の生産性や日常生活の満足度を低下させることが指摘されています。
また、便秘症が長期的に持続すると、大腸憩室症、痔核、腸閉塞のリスクが高まる可能性があり、早期の対応が重要とされています。
便秘症の原因
便秘の原因は様々ですが、大きく「機能性便秘症」、「器質性便秘症」、「薬剤性便秘症・二次性便秘症」の3つに分類されます。
機能性便秘症
まず最も多いのが「機能性便秘症」です。
これは大腸や肛門に特別な病気が見つからないのに、便が出にくくなるタイプです。
日々のストレス、運動不足、水分や食物繊維の不足、不規則な生活習慣などが関係します。
また、過敏性腸症候群(IBS)といって、便秘に加えて腹痛やお腹の張りなどをともなう病気と重なって起こることもあります。
機能性便秘症はさらに、以下の3つに分けられます。
大腸通過遅延型
腸管の運動機能が低下しており、便の移動が遅くなるタイプです。
排便回数の減少が特徴です。
便排出障害型(直腸肛門障害型)
便意があっても腹圧や骨盤底筋の協調運動に障害があり、排便がうまくいかないタイプです。
混合型
大腸の通過遅延と便排出障害の両方がみられるタイプで、治療が難しいことがあります。
器質性便秘症
「器質性便秘症」とは、大腸や直腸の形の異常や病気が原因で起こる便秘です。
たとえば、大腸がん、腸の手術後の癒着、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、直腸が腟の方向にふくらむ「直腸瘤(りゅう)」や、直腸が肛門の内側に入り込む「直腸重積」などが含まれます。
これらの異常があると、便が物理的にスムーズに進まなくなり、排便しにくくなります。
特に中高年で急に便秘が悪化した場合、大腸がんなどの命に関わる重大な疾患が関係していることもあるため注意が必要です。
器質性便秘は専門的な検査で原因をしっかり調べることが大切です。
薬剤性便秘症・二次性便秘症
「薬剤性・二次性便秘症」は、薬の副作用や他の病気によって起こるタイプです。
たとえば、痛み止めのオピオイド、抗うつ薬、抗アレルギー薬、パーキンソン病の薬、カルシウム拮抗薬(高血圧の薬)などは便秘の原因になることがあります。
また、甲状腺の病気(甲状腺機能低下症)や糖尿病、パーキンソン病、脊髄の病気など、全身の病気が便秘につながることもあります。
これらの場合、便秘の治療には原因となる病気や薬への対応も必要です。
便秘症の症状
便秘症とは、「便がなかなか出ない」「出てもスッキリしない」「便が硬くて痛い」「トイレに時間がかかる」など、排便に関する困りごとが続く状態をいいます。
単に排便の回数が少ないだけでなく、こうした不快な症状が週に数回以上、3か月以上続く場合は「慢性便秘症」とされます。
海外の診断基準(ローマIV基準)でも、6か月前から何らかの便秘症状があり、直近3か月はずっと続いていることが目安とされています。
また、「お腹が張る」「食欲が落ちる」「吐き気がする」などの症状を伴うこともあります。
さらに注意すべきサインとして、
- 血便が出る
- 強い腹痛がある
- 体重が急に減った
などがある場合は、大腸がんなどの重大な病気の可能性もあるため、できるだけ早めに医療機関を受診してください。
気になる症状は放置せず、専門医に相談することが大切です。
便秘症の検査・診断
便秘の診断は、問診・診察に加え、必要に応じて以下の検査を行います。
問診
問診では以下のことを確認します。
- 便の性状、排便の頻度、排便時の状況
- 食生活や生活習慣
- 治療中の病気や服用中の薬剤
身体診察
診察では、腹部の触診や聴診を行います。
また、必要に応じて、直腸付近の病変の確認や、直腸内の便の状態を確認するため、直腸診(おしりからの診察)を行う場合があります。
検査
便秘の際に行う検査としては、腹部レントゲン検査、CT検査、大腸内視鏡検査があります。
便秘症を引き起こす原因として最も注意するのは大腸がんです。
このため、便秘が継続している方で、大腸内視鏡検査を受けたことがない方や、以前の検査から間が空いている方には、大腸内視鏡検査をお勧めしています。
便秘症の治療
便秘症の治療は、生活習慣の改善、薬物療法が中心ですが、場合によっては外科的治療を組み合わせて行います。
生活習慣の改善
便秘症の治療では、まず生活習慣の見直しが基本となります。
水分をしっかりとる、1日3食きちんと食べる、食物繊維を意識的に摂ることが大切です。
便秘症の予防・改善のために推奨される1日の水分摂取量は、成人の場合おおよそ1.5~2リットルが目安とされています。
また、朝食後のトイレ習慣をつけることで腸の動きが整いやすくなります。
適度な運動、特にウォーキングなどの有酸素運動も腸のぜん動運動を促進します。
ストレスをためない生活も腸の健康にとって重要です。
こうした習慣を日常に取り入れることが、自然な排便につながります。
薬物療法
生活習慣を改善をしても便秘が良くならない場合は、薬による治療が行われます。
便秘薬にはさまざまな種類があり、症状や体質に合わせて選ばれます。
代表的なものとして、「浸透圧性下剤」は腸の中に水分を集めて便をやわらかくし、「刺激性下剤」は腸を直接刺激して動かす作用があります。
刺激性下剤は長期間の使用で効果が弱くなることがあるため、注意が必要です。
さらに近年では、新しいタイプの便秘治療薬も登場しています。
たとえば「粘膜上皮機能変容薬(ルビプロストンやリナクロチドなど)」は腸管内に水分を分泌させて自然な排便を促し、「胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)」は胆汁酸の働きを利用して腸の動きを活性化します。
これらの薬は、従来の下剤では効果が不十分だった方にも有効なケースがあります。
刺激性下剤のセンナやダイオウ、ピコスルファートナトリウムを処方することもありますが、長期連用は耐性や習慣性が生じる可能性があるため、頓用での使用が望ましいとされています。
便秘は「たかが便秘」と軽視されがちですが、慢性的になると生活の質(QOL)を大きく損なうだけでなく、大腸がんのサインであることもありますので、適切な診断と早期の対応が大切です。
自己判断に頼らず、気になる症状があるときは早めに医療機関で相談しましょう。
草加西口大腸肛門クリニックでの【便秘症】の診療
当院には、日頃から便秘でお悩みの患者さんが多くご来院されています。
「いつも便が出にくい」
「市販の薬に頼りきりで不安」
「大腸の病気が隠れていないか心配」
など、様々なお悩みに対応しています。
まずは、丁寧な問診を通じて、排便の状態や生活習慣、服用中の薬などを詳しくお伺いします。
必要に応じて腹部の診察や直腸診を行い、異常がないかを確認します。
また、これまでに大腸内視鏡検査を受けたことがない方、以前の検査から年数が経っている方、血便や腹痛などの症状がある方には、大腸がんなどの重大な病気を早期に発見するため、内視鏡検査をご提案しています。
治療の基本は生活習慣の改善です。食事や水分、運動のアドバイスを行い、それでも症状が改善しない場合は、便の性状や腸の状態に合わせた内服薬を処方します。
刺激性下剤など市販薬を自己判断で使い続けている方には、より適切な治療へ切り替えるお手伝いをいたします。
便秘の背景に器質的な病気や他の疾患が疑われる場合には、さらに詳しい検査が必要になることもあり、信頼できる総合病院へのご紹介も行っています。
「最近、便秘がひどくなった」「薬が効かなくなってきた」
「検査を受けるタイミングか迷っている」
そう感じたときは、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
患者さん一人一人にあわせた診療により、安心して日常生活を送れるようサポートいたします。