痔核(いぼ痔)
目次
痔核(いぼ痔)とは

痔核(いぼ痔)は、歯状線という構造を境にして、中にできるタイプ(内痔核)と外にできるタイプ(外痔核)に分けられます。
肛門は括約筋(肛門を締める筋肉)と肛門クッション(肛門のすき間を埋める構造)という仕組みで、便やガスのもれを防いでいます。
肛門クッションは毛細血管や結合組織でできていて、この肛門クッションが小さな内痔核です。
小さな内痔核は誰にでもあり、肛門の機能を保っている大切な構造物です。
痔核(いぼ痔)の原因

痔核(いぼ痔)は、肛門周囲の静脈がうっ血し、血管が腫れてこぶのようになることで発症します。
原因はさまざまですが、もっとも多いのは排便時の強いいきみや、長時間の座りっぱなしによる肛門への圧力です。
便秘や下痢を繰り返すことも、肛門に負担をかけ、痔核の発症に関係します。
また、妊娠・出産も大きな要因のひとつです。
妊娠中は子宮が大きくなることで骨盤内の血流がとどこおりやすくなり、出産時のいきみも痔核を引き起こす原因となります。
加齢によって肛門周囲の支持組織がゆるむことも、痔核ができやすくなる一因です。
さらに、デスクワーク中心の生活や、トイレで長時間スマートフォンを見ながら過ごす習慣も注意が必要です。
このように、日常生活の中に痔核が悪化するリスクは多くひそんでいます。
痔核の悪化を予防・改善するためには、排便習慣の見直しや適度な運動、バランスの良い食生活など、生活習慣全体を整えることが一番重要です。
痔核(いぼ痔)の症状

内痔核は、硬い便や強いいきみなどの刺激により、腫れたり、うっ血したりします。
その結果、便が通る時にこすれて出血したり、ひどくなると肛門の外に脱出するようになります。
脱出が軽度であれば、自然に戻ったりしてくれますが、程度がひどくなると指で押し戻さないと戻らなくなります。内痔核がおしりから飛び出てきて戻らない状態が続くと、うっ血して痛みの原因となります。
また、痔からの出血がひどいと貧血になることもあります。
もう一つのいぼ痔である外痔核は、痔の中に血の塊(血栓)を作り、腫れと強い痛みを伴うことがあり、血栓性外痔核といいます。
血栓性外痔核は基本的には外側の痔なので指で押しても戻りません。
指で押すことによりかえって刺激が加わり、腫れや痛みがひどくなることがありますので、血栓性外痔核の場合は指で戻そうとするのはNGです。
血栓性外痔核の表面をおおっている皮膚が薄くなり破けると、出血をしますが、内痔核からの出血ほど大量に出ることはありません。
血栓性外痔核も肛門のやや内側にできることもあり、指で押すと何となく中に入る感じがして、内痔核との区別がつきにくい場合がありますので注意が必要です。
このように同じいぼ痔でも対処方法が異なりますので、迷った時はあまり触らず早めに病院を受診してください。
痔核(内痔核)の分類
内痔核は脱出の程度により1〜4度に分けられます
内痔核の脱出の程度 | その内容 |
---|---|
1度 | 便を出す時にほとんど脱出しない |
2度 | 便を出す時に脱出するが自然に戻る |
3度 | 便を出す時に脱出して指で押さないと戻らない |
4度 | 便を出す時以外でも常に脱出している |
3度くらいまでの脱出であれば、生活習慣の改善に加え、軟膏や内服薬での治療で、日常生活に支障がない程度まで症状が改善することもあります。
一方、常に脱出しているような4度の内痔核の場合は、保存的治療での症状の改善は難しく、手術が必要になるケースも多くなります。
痔核(いぼ痔)の検査・診断
肛門鏡(こうもんきょう)

問診や視診、肛門鏡(こうもんきょう)という専門の器具を使った肛門の診察をして、痔核の診断をします。
痛みが強い場合などは、無理はせず可能な範囲での診察をいたしますのでご安心ください。
また、診察の時は排便の状況や日頃の生活の状況を100%再現はできないので、診察の時はそれほど大きな痔ではないと感じても、実際は脱出して指で戻したりしている方もいらっしゃいます。

日頃の脱出の状況を正確に伝えていただくには、ご自身が「最も脱出しているな」と感じる状態をスマホで写真を撮っていただけると、より客観的な評価をすることができます。
痔核(いぼ痔)の治療
まず最初に、痔核があるからといって、必ずしも手術をする必要はありません!
そして、痔核を放置しても癌にはなりません!
手術の決め手になるのは、あなたが、いぼ痔があることによって、困っているかどうかです。
内痔核の治療

内痔核の治療の基本は、排便習慣や食習慣の改善が重要で、それに加えて軟膏や飲み薬での治療を行います。
それでも脱出や出血などの症状がよくならず、生活に支障をきたしている方の場合に、はじめて手術も検討されます。
「排便のたびに飛び出てきて指で押し戻すのは嫌だな…」
「最近排便のときに脱出して、出血もするからなんとかしたいな…」
「運動をすると飛び出てきてなかなか戻らず痛みもあり、運動に集中できなくて困る…」
痔に伴う様々な症状でお困りの場合は、手術を受けることによって生活の質は向上します。
一方で、排便のたびに毎回いぼ痔がおしりから飛び出てきて指で押し戻していても、本人が困っていなければ、手術の必要はありません。
手術の場合は時間や費用の負担が発生します。
麻酔や手術に伴う偶発性(副作用)もゼロではありません。
私たちは「痔があるから手術をしましょう」と手術をお勧めすることは決してありません。
手術をすることにより、痔に伴う症状が改善し、あなたの悩みが解決できる場合に、初めて手術をご提案します。
手術方法には、切除、注射療法があり、日帰り、入院などバリエーションも豊富です。
あなたの現在の生活状況にあった手術方法をご提案します。
長年痔による症状でお悩みの方、本当に手術をしたほうがいいかお困りの方は是非一度ご相談ください。
手術の場合は、基本的には本院の西新井大腸肛門科での入院手術をご案内しています。
血栓性外痔核の治療
次に、血栓性外痔核は、基本的に手術をする必要はなく、軟膏や内服による治療で自然に改善していきます。
しかし、痛みが強いと生活に支障をきたしますので、痛み止めの内服も必要となります。
同じように痛みを伴う病気に肛門周囲膿瘍があり、血栓性外痔核との判断が難しい場合があります。
肛門周囲膿瘍の場合は、自然に改善しないことが多く、抗生剤の内服や膿を出す処置が必要となりますので、おしりが腫れて痛みを伴う場合は、一度クリニックを受診してみてください。
痔核(いぼ痔)の悪化の予防について
痔核の悪化の予防で最も大切なのは日々の生活習慣です。
基本的な生活習慣の改善ができないと、どんなに薬を使っても効果は一時的で、また元の状態に戻ってしまいます。
ここでは、内痔核と血栓性外痔核の予防について解説していきます。
内痔核の悪化の予防

内痔核は、排便時のいきみや長時間の座位、便秘・下痢の繰り返しが原因で悪化します。
予防には、食物繊維と水分を十分に摂り、毎日スムーズな排便を心がけることが大切です。
トイレで長時間座るのは避け、排便は5分以内が理想です。
また、運動不足も便秘を悪化させるため、ウォーキングなどの軽い運動を習慣にしましょう。
アルコールや香辛料の摂りすぎも肛門の血管をうっ血させ、内痔核を悪化させる要因となります。
日々の生活習慣を整えることが、内痔核の悪化の予防には最も重要です。
血栓性外痔核の予防
血栓性外痔核の発症の引き金となるのは、重いものを持ち上げたときのいきみや、寒い場所にいること、長時間の座位、便秘、下着がこすれるなど様々です。
予防には、肛門周囲の血流を保つことが重要で、冷えを避けて体を温める習慣や、入浴で血行を良くすることが効果的です。
座りっぱなしの時間を減らし、こまめに立ち上がるようにして、肛門への持続的な負担がかからないようにすることも重要です。
血栓性外痔核になる時には、何らかの肛門への負担があることが多いのですが、中にはこれといった原因が思い当たらない場合もあり、完全に予防するのは難しいです。
しかし、急激な肛門への負担を避けることで、血栓性外痔核のリスクを少しでも下げることができますので、できることからやってみましょう。
草加西口大腸肛門クリニックでの『痔核(いぼ痔)』の診療

当院では、痔核(いぼ痔)に関する様々な悩みをお持ちの⽅が多く来院されます。
「以前から肛門から何かが出てきていて不安…」
「急におしりが腫れて強く痛む…」
「他院で手術をすすめられたけど、本当に必要か知りたい…」
といったお悩みは、珍しいことではありません。
診察ではまず、いつからどのような症状があるのか、生活にどの程度支障が出ているのかなどを丁寧にうかがいます。
そのうえで、肛門の状態を診察し、現在の痔核の程度を評価します。
当院では、「痔がある=すぐ手術」という方針ではありません。
痔核の多くは、生活習慣の見直しや、軟膏・内服薬による治療でコントロール可能です。
まずは手術以外の方法で、症状が落ち着くかを一緒に確認していきます。
ただし、脱出や出血が強く、日常生活に支障をきたしている場合には、手術を選択することで症状が大きく改善することもあります。
手術をご希望される場合には、ふだんの生活や症状の強さに合わせて、患者さんに合った方法(たとえば、痔を切り取る手術や注射による治療など)をご提案します。
手術をご希望の場合は、当院の本院である「西新井大腸肛門科」で入院して受けていただくことになります。
また、「入院は難しい」という方には、本院での外来手術についてもご相談いただけますので、どうぞご安心ください。
「肛門科を受診したらすぐ手術になるのでは…」と不安な方も多いと思いますが、当院ではしっかりとご希望をうかがい、必要なことだけをご提案します。
まずは、「自分の痔の状態を知ること」から始めてみませんか?
日頃から痔の症状に悩んでいる方、手術を受けるか迷っている方も、どうぞお気軽にご相談ください。