胃アニサキス症
目次
アニサキス症とは?

アニサキス症とは、寄生虫であるアニサキスの幼虫が、生の魚介類を介して人の体内に侵入し、胃や腸の粘膜に刺さることで起こる感染症です。
日本では生魚を食べる習慣があるため、発症例は世界的にも多く、厚生労働省の報告によれば年間数百件以上の症例が確認されています。
アニサキス症は、アニサキスの寄生部位により、以下の3つに分類されます。
- 胃アニサキス症
- 腸アニサキス症
- 腸管外アニサキス症
多くは食後数時間以内に激しい腹痛を引き起こす『胃アニサキス症』として現れますが、まれに腸や腹腔内に入り込む『腸アニサキス症』『腸管外アニサキス症』もあります。
また、アニサキスのタンパク質に対してアレルギー反応をおこす『アニサキスアレルギー』という病態もあります。
今回は『胃アニサキス症』を中心に解説をしていきます。
アニサキス症の原因
アニサキスは、イルカやクジラなどの海洋哺乳類を終宿主とし、魚類やイカなどを中間宿主とする寄生虫です。
人間は本来の宿主ではないため、アニサキスが体内に入っても成虫にはならず、体内で死滅しますが、胃や腸の壁に刺入することで強い炎症反応を引き起こします。
主な感染源としては、サバ、アジ、イカ、サンマ、カツオ、サケなどの魚介類があり、特に生食(刺身・寿司・塩辛・〆サバなど)がリスクとなります。
アニサキス症の分類
アニサキス症は、アニサキスの寄生部位や病態により以下の3つに分類されます。
また、それぞれの病態の発生の目安は以下の通りです。
胃アニサキス症(約95〜99%)
最も頻度が高く、食後数時間以内にみぞおちの激しい痛みを生じます。
胃内視鏡検査で虫体が確認・除去できることが多く、治療により症状は速やかに改善します。
腸アニサキス症(約1〜5%)
胃を通過した虫体が小腸や大腸に到達し、1〜2日後に下腹部の痛み、腹部膨満、腸閉塞様の症状を引き起こすことがあります。
診断が難しく、食事歴や画像診断が重要です。
腸管外アニサキス症(0.1%未満)
極めてまれな病型で、虫体が腹腔内や肺、皮下組織、精巣などに迷入することで炎症性腫瘤や好酸球性肉芽腫として発見されることがあります。
アニサキス症の症状
もっとも多いのは「胃アニサキス症」で、食後数時間以内にみぞおち周辺の激しい痛み、悪心、嘔吐などを引き起こします。
症状は突発的かつ強烈で、救急受診が必要となるケースも珍しくありません。
腸アニサキス症では、発症が1〜2日遅れることがあり、下腹部の痛みやおなかのはり、腸閉塞に似た症状を起こすことがあります。
腸管外アニサキス症は非常にまれで、腹膜や肺、精巣など胃腸以外の臓器で虫体が確認された報告があります。
アニサキス症の検査・診断・治療
胃アニサキス症
胃アニサキス症が疑われる場合、最も有効な検査は胃内視鏡検査です。
内視鏡で虫体を直接確認できるため確定診断が可能です。
虫体を鉗子で摘出すれば治療も同時に行えるため、早期受診が非常に重要です。
虫体を取り除くと痛みは速やかに軽くなります。
胃薬や抗菌薬などの内服薬では治療効果はありません。
胃アニサキス症の治療は、「早く虫体を除去すること」につきます。
腸アニサキス症
腸アニサキス症は、症状が胃より遅れて現れることが多く、診断が難しい病型です。
CTや腹部超音波で腸のむくみや腸閉塞の有無を確認し、患者さんの食歴や症状の経過とあわせて総合的に判断します。
虫体は内視鏡では確認できないことが多いです。
腸にまで到達した虫体は、自然に排出されるのを待つのが基本です。
その間はお腹を安静にし、水分補給や点滴、痛み止めなどの対症療法が行われます。
腸閉塞や炎症が強い場合は入院が必要になることもあり、まれに外科的処置が検討されることもありますが、多くは保存的に改善します。
腸管外アニサキス症
腸管外アニサキス症は、アニサキスが腸の外にある組織(腹膜や肺、皮膚の下、精巣など)に入り込み、慢性的な炎症や腫瘤を作る非常にまれな病態です。
腸管外アニサキス症の多くは手術中や検査中に偶然見つかります。
アニサキスが寄生した場所による強い症状(痛みなど)がある場合や、しこりが見つかった場合には、手術でその部分を取り除く治療が行われ、手術後に炎症が改善することが一般的です。
ちなみに、腸管外アニサキス症の治療薬はありません。
良性腫瘍や悪性疾患との鑑別が重要なため、摘出した組織の病理組織検査を行い、アニサキス症の確定診断をします。
アニサキス症の予防
以下に、日常生活でできるアニサキス症の予防をまとめました。
冷凍処理
アニサキスは、-20℃以下で24時間以上冷凍すれば死滅します。
家庭用の冷蔵庫でもこの条件を満たすように設定しましょう。
加熱処理
加熱によりアニサキスは死滅します。
中心温度が70℃以上で1分以上加熱するのが安全です。
焼き魚・煮魚などはアニサキス症を予防する確実な方法です。
内臓の早期除去・内臓を生で食べない
アニサキスは魚の内臓に多く寄生しているため、購入後はすぐに内臓を取り除くことが効果的です。
そして、内臓を生で食べることはやめましょう。
生の魚を調理する際は目でよく確認して虫体を除去
魚が生きている時からすでに筋肉内にアニサキスが寄生している場合もあるため、生魚を調理する際は、目で確認してアニサキスの幼虫を除去してください。
加工品にも注意
一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しませんので注意が必要です。
アニサキスアレルギー
アニサキスアレルギーとは、寄生虫アニサキスに含まれるタンパク質に対して体が過剰に反応し、じんましん、腹痛、呼吸困難、アナフィラキシーなどの症状を起こす即時型アレルギーです。
アニサキスが死んでいてもアレルゲンは壊れないため、冷凍や加熱された魚でも発症する可能性があります。
症状は食後すぐ〜数時間後に現れ、最長で12時間後の報告もあります。
血液検査でアニサキス特異的IgE抗体を測定しますが、検査は主にアレルギー専門医のもとで行われます。
治療は抗ヒスタミン薬やステロイド、重症時はエピペンの使用が必要です。
魚介類でアレルギー症状が出たことがある人は、アニサキスアレルギーの可能性も考え、アレルギー科の専門医の診察を受けましょう。
草加西口大腸肛門クリニックでの『アニサキス症』の診療
当院にはアニサキス症疑いの患者さんも来院されます。
「昨夜に居酒屋で、シメサバやイカを食べて、朝からお腹が痛いです…」
「昨日釣りに行って釣った魚を生で食べました…」
など、食事歴から胃アニサキス症が疑われる場合が多いです。
その場合は、胃内視鏡検査を行い、アニサキスの有無を確認し、アニサキスがいた場合は除去します。
アニサキス症は日頃からの予防が一番重要ですが、万が一感染してしまった時は、早めの対処が必要となりますので、早めにクリニックにご相談ください。