おしりが痛い
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おしりが痛い(肛門痛)とは?

肛門痛とは、肛門周囲に生じる痛みの総称であり、軽度の違和感から激痛まで幅広い症状を含みます。
一般的には、いぼ痔や切れ痔などが原因で痛むことが多く、一時的な痛みですぐに改善する場合は経過をみてもいいのですが、生活に支障をきたしている場合は治療の対象となります。
また、痛みが継続する場合や、出血などのその他の症状を伴う場合には、痔が原因ではなく、がんなどの悪性の病気の可能性もあるため注意が必要です。
肛門痛の原因となる疾患
肛門痛を引き起こす主な疾患には以下のようなものがあります。
痔核(いぼ痔)

痔核は、肛門周囲の静脈がうっ血し、腫れてこぶ状になる病気です。
肛門の内側にできる内痔核は初期段階では痛みは少ないですが、悪化すると脱出して痛みを伴うことがあります。
一方、肛門の外側にできる血栓性外痔核は突然の強い痛みとしこりを伴うことが多いです。
痔核の痛みは、軟膏や内服薬、鎮痛剤などで改善することが多いため、絶対に手術が必要というわけではありません。
痔核(いぼ痔)裂肛(切れ痔)

裂肛は、肛門の上皮が裂けることで発生し、特に硬い便の排出時に激しい痛みを引き起こします。
排便時の痛みが強く、排便後もしばらく持続することが特徴です。
急性裂肛は自然治癒や、軟膏などの治療で改善することが多いです。
しかし、裂肛を繰り返して慢性化すると見張りイボや肛門ポリープという構造物ができたりして、治りにくくなったり、肛門上皮が硬くなることで切れやすくなったりして、裂肛がさらに悪化する悪循環に陥ります。
裂肛を長期間放置すると肛門狭窄の原因にもなり、手術が必要になる場合もありますので、早めの治療が大切です。
裂肛(切れ痔)痔瘻・肛門周囲膿瘍

肛門周囲膿瘍は、肛門の周囲に膿がたまることで発生し、強い痛みや腫れを伴います。発熱を伴うこともあり、悪化すると皮膚が破れて膿(うみ)が出ることもあります。
肛門周囲膿瘍の原因の一つに痔瘻があります。
痔瘻は、肛門の入り口から少し入ったところからトンネル状の管ができた状態で、肛門周囲に慢性的な炎症を繰り返します。
痔瘻は症状が落ち着くことはありますが、自然治癒することはありません。
痔瘻は軟膏などの治療では治らないので、根治のためには手術が必要です。
また、複雑な痔瘻を長期間放置すると痔瘻がんになる可能性があるため、慢性的に膿が出続けている場合は、早めに医療機関を受診してください。
痔瘻・肛門周囲膿瘍肛門狭窄
肛門狭窄は、何らかの原因で肛門の上皮が硬くなり、排便時に痛みを伴う病態です。
裂肛をくり返していることや、肛門の手術後に発生することがあり、特に排便時に強い痛みを感じます。
軽度の場合は軟膏やブジーといって肛門を拡張する処置で改善することがありますが、重度の場合は手術による拡張が必要になります。
直腸脱
直腸脱は、直腸が肛門から外に飛び出す状態で、違和感や痛みを伴います。
高齢者や便秘の人、出産経験の多い女性に多くみられます。
軽度の場合は手で押し戻すことができますが、進行すると手術が必要になることがあります。
肛門周囲の皮膚炎・湿疹

アレルギー反応や感染症、刺激物の使用によって肛門周囲の皮膚が炎症を起こすことがあります。
かゆみや痛みが主な症状で、無意識に掻きむしることでさらに悪化することもあります。
適切なスキンケアが基本で、軟膏などの抗炎症剤の使用や、原因となる感染症の治療が有効です。
直腸がん(大腸がん)

大腸がんのなかで、肛門付近の直腸にできるがんを直腸がんといいます。
基本的には直腸の中に腫瘍はとどまりますが、進行すると肛門部まで病変が広がり、肛門部の痛みが出現する場合があります。
「長年の肛門部痛があり、痔だと思っていたら実は進行直腸がんだった」というケースもありますので、肛門部痛が続く場合には注意が必要です。
大腸がん肛門がん(扁平上皮癌)
肛門管がんは、肛門管(肛門の内側の部分)に発生する悪性腫瘍で、極めてまれな病気で、直腸がんとは異なる特徴を持ちます。
初期の段階では自覚症状が少なく、軽度の出血や違和感程度であることが多いため、痔と思って様子をみている人もいます。
しかし、進行すると排便時の痛み、肛門周囲のしこり、持続的な出血が見られるようになります。
原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)の感染や慢性的な刺激が関与しているとされます。
診断には生検が必要であり、治療には放射線療法や化学療法が組み合わされることが一般的です。
痔瘻がん
痔瘻がんは、長期間放置された痔瘻ががん化することで発生する非常にまれな疾患です。
普通の痔瘻が癌化する可能性は低いのですが、複雑な痔瘻を長期間放置した場合には痔瘻癌が発生する可能性がありますので、注意が必要です。
長期間続く痔瘻の炎症が原因とされ、通常の痔瘻と異なり、治りにくい潰瘍や出血、悪臭を伴うことがあります。
進行すると肛門周囲の組織を破壊し、痛みが強くなります。
診断には生検が必要であり、治療は手術が中心となりますが、予後の悪い病気です。
無症候性肛門痛(肛門神経痛)
無症候性肛門痛は、肛門や直腸に明らかな異常がないにもかかわらず痛みを感じる病態です。
主に「突発性直腸痛」と「持続性直腸痛」の2種類に分類されます。
突発性直腸痛は、一時的に強い痛みが走るが短時間で消失するタイプで、特に夜間に発生しやすい傾向があります。
一方、持続性直腸痛は、長時間にわたり鈍い痛みが続くもので、ストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられています。
排便とは無関係に発症することが多く、座っている際に悪化する場合もあります。
治療には神経調整薬や抗不安薬が用いられ、生活習慣の見直しも有効です。
おしりが痛い時にはどうしたらいいの?
おしりの痛みは、とてもつらくて、どうしたらいいか迷ってしまいますよね。
「そのうち治るかも」と思って様子を見たくなる気持ちもよくわかります。
でも、おしりの痛みには、軽いものから放置すると悪化するものまでさまざまな原因があります。
一時的な痛みで自然に良くなることもありますが、強い痛みや、出血・しこり・痛みが長く続く場合は注意が必要です。
早めに肛門科の専門医の診察を受けることで、原因をしっかり調べて、適切な治療を始めることができます。
「まだ大丈夫かな」と我慢しているうちに症状が悪化してしまうこともあるため、少しでも気になる症状があれば、無理せずクリニックにご相談ください。
おしりの痛みは、早めに対応することで、楽に過ごせる毎日を取り戻すことができます。
おひとりで悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
草加西口大腸肛門クリニックでの【おしりが痛いとき】の診療

おしりの痛みでお悩みの方は、当院にも多くご相談にいらっしゃいます。
まずは、どのような痛みか、いつから続いているのかなどを丁寧におうかがいします。
そのうえで、おしりの診察を行います。
診察は「視診(見て確認)」「直腸指診(指での触診)」「肛門鏡検査(専用の器具を用いる)」などを行いますが、痛みが強い場合には無理をせず、可能な範囲で丁寧に診察を進めていきますのでご安心ください。
必要に応じて、肛門の状態をより詳しくみるために「肛門エコー検査(超音波検査)」を行うこともあります。
肛門エコーは指よりも細い機器を使用するため、痛みはほとんどありません。
さらに、痛みの原因が大腸にある可能性があると判断された場合には、大腸内視鏡検査をご案内いたします(別日での実施になります)。
診察後は、現在考えられる原因や病名について、わかりやすくご説明し、治療の選択肢について一緒に相談していきます。
症状の内容によっては、より高度な検査や治療が必要となる場合もありますが、その際には連携している総合病院をご紹介いたします。
おしりの痛みは、よくある切れ痔から、まれに大腸がんなど命に関わる重大な病気が原因となっていることもあります。
「きっと痔だろう」と自己判断して様子を見ているうちに、症状が悪化してしまうケースも少なくありませんので、早めに受診して原因をしっかりと確認することが大切です。
当院では、皆さまの不安に寄り添いながら、安心して毎日を過ごしていただけるよう、お一人おひとりに合わせた丁寧な診療を心がけています。
おしりの痛みや違和感が気になるときは、どうぞお気軽にご相談ください。