おしりから出血する
目次
おしりから出血するとは?

「おしりから出血した…!」そんな経験があると、誰しも驚き、不安になるものです。
トイレでふと便器を見ると赤い血が混ざっていたり、トイレットペーパーに鮮血がついていたり。
場合によっては下着にまで血がついていることもあります。
おしりからの出血には、さまざまな原因があります。
痔のような良性の病気から、大腸がんなど命に関わる病気まで、出血の原因は幅広く、見た目だけでは判断がつきません。
出血の色、量、タイミング(排便時か、それ以外か)、痛みの有無など、症状を細かく観察することで、ある程度の推測は可能ですが、正確な診断には専門的な診察や検査が必要です。
「おそらく痔からの出血だろう」と自己判断せずに、必ず専門医の診察を受けましょう。
おしりからの出血の原因となる疾患
おしりからの出血の原因となる代表的な病気についてみていきます。
痔核(いぼ痔)

痔核は、肛門周囲の静脈がうっ血し、腫れてこぶ状になる病気です。
痔痔による出血の場合は、排便の際に出血したり、便に血液が付いたり、おしりをふくとトイレットペーパーに赤い血がついたりします。
いぼ痔(内痔核)はおしりのやや内側の血管が腫れることで出血します。
一方、肛門の外側にできる血栓性外痔核は突然の強い痛みとしこりを伴うことが多いです。
血栓をおおっている表面の皮膚が破れると出血をします。
痔核からの出血は、軟膏や内服薬でコントロールできることが多いですが、場合によっては止血のための手術が必要となることもあります。
痔核(いぼ痔)裂肛(切れ痔)

裂肛は、肛門の上皮が裂けることで発生し、特に硬い便の排出時に激しい痛みを引き起こし、出血も伴います。
切れ痔の出血は、トイレットペーパーにつくくらいの量で鮮やかな出血(鮮血)が特徴です。
切れ痔からの出血は、便通のコントールと軟膏や内服薬によりほとんど改善します。
裂肛(切れ痔)痔瘻・肛門周囲膿瘍

肛門周囲膿瘍は、肛門の周囲に膿(うみ)がたまることで発生し、強い痛みや腫れを伴います。
発熱を伴うこともあり、悪化すると皮膚が破れて膿や血が出ることもあります。
肛門周囲膿瘍の原因の一つに痔瘻があります。
痔瘻は、肛門の入り口から少し入ったところからトンネル状の管ができた状態で、肛門周囲に慢性的な炎症を繰り返します。
痔瘻からの出血は、鮮血というよりは、膿の混ざったような血液が特徴です。
痔瘻は症状が落ち着くことはありますが、自然治癒することはありません。
痔瘻は軟膏などの治療では治らないので、根治には手術が必要です。
また、複雑な痔瘻を長期間放置すると痔瘻がんになる可能性があるため、慢性的に血膿が出続けている場合は、早めに医療機関を受診してください。
痔瘻・肛門周囲膿瘍大腸ポリープ

大腸ポリープは大腸粘膜にできる良性の病変です。
放置するとがんの元になる腫瘍性のポリープである腺腫(せんしゅ)と、がん化しないその他のポリープがあります。
小さなポリープは特に症状は出ませんが、ポリープが大きくなると出血しやすくなり、血便の原因となることがあります。
大腸内視鏡検査による切除が有効であり、早期発見・早期切除することで大腸がんの予防につながります。
小さなポリープであれば日帰りでの内視鏡切除が可能ですが、大きなものでは入院が必要になりますので、早期の内視鏡治療がおすすめです。
大腸ポリープ大腸がん

大腸がんは悪性疾患で、命に関わる病気です。
初期の大腸がんは、症状は特に出ませんが、進行すると便に血液が混ざることがあり、便秘や下痢を繰り返す、便が細い、腹痛、お腹がはる、体重減少などの症状を伴うこともあります。
肛門近くの大腸がんの場合は、赤い出血となり、痔からの出血と区別がつかないことがあります。
また、痔と大腸がんが同時に存在している場合もあり要注意です。
大腸がんは大腸内視鏡検査で早期発見することができます。
「赤い血だから痔からの出血だろう」と自己判断せずに、出血がある場合は必ず医療機関を受診してください。
大腸がん潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜に炎症や潰瘍が生じる原因不明の慢性疾患で、国から難病指定をされている病気の1つです。
自己免疫異常が関与するとされていて、発症のピークは20歳代〜30歳代ですが、若年者から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。
症状として、血便や下痢、腹痛が特徴的で、炎症が強い場合は頻繁に血便が見られ、貧血や体重減少を伴うことがあります。
薬物療法で炎症をコントロールすることが治療の中心となりますが、重症例などでは外科手術が必要になることもあります。
潰瘍性大腸炎クローン病
クローン病は口から肛門までの、消化管全体に炎症が発生する原因不明の慢性疾患で、潰瘍性大腸炎と同様に国から難病に指定されています。
発症のピークは潰瘍性大腸炎よりやや若い10歳代〜20歳代の若年者で、男性に多く見られます。
炎症の中心は、小腸や大腸で、下痢、血便・下血のほか、腹痛、体重減少、発熱などを伴います。
治療は薬物療法や栄養療法が中心で、重症例では外科手術が必要になることもあります。
感染性腸炎
細菌やウイルス、寄生虫による腸の感染症で、下痢や血便を伴うことがあります。
代表的な病原体として、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌などが挙げられます。
発熱や腹痛を伴い、激しい下痢を引き起こすことが特徴です。
原因となる微生物に応じた治療が必要となります。
虚血性腸炎
何らかの原因により、腸の血流が低下し、一部の腸粘膜が壊死することで発症し、『大腸の心筋梗塞』とも呼ばれます。
突然の左腹部から下腹部痛、それに続く下痢や血便が特徴です。
高齢者に多く発症し、原因としては動脈硬化や便秘、脱水などがあります。
軽症の場合は腸を安静にすることで改善しますが、症状が強い場合には入院での治療が必要となることがあります。
大腸憩室出血
大腸壁にできる憩室(袋状のくぼみ)が原因で出血する疾患です。
多くの場合痛みはなく、突然大量の赤い出血がおこります。
大腸憩室出血は、高齢者に多く、便秘や食生活が影響すると考えられています。
多くは自然止血しますが、出血が続く場合は内視鏡による止血やカテーテルによる止血術などが必要になります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜に潰瘍が形成される疾患です。
主な症状はみぞおちの痛みです。
胃・十二指腸潰瘍では黒色便(タール便)として出血が見られることがあり、吐血を伴うこともあります。
原因としてピロリ菌感染やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用などが関与します。
治療は、胃酸を抑える薬が用いられ、ピロリ菌感染がある場合には除菌を行います。
胃がん
胃がんは胃の悪性腫瘍で、進行に伴い、腫瘍が潰瘍化して出血し、黒色便が見られることがあります。
初期には症状はありませんが、進行すると食欲不振や体重減少、胃の不快感や腹痛が現れます。
早期発見には定期的な内視鏡検査が重要であり、治療は内視鏡的切除や外科手術、化学療法が行われます。
おしりから出血したときには?
突然のおしりからの出血に、びっくりしたり、不安になったりするのは当然のことです。
「痛みもないし、少しだけだから大丈夫かな?」と思って様子を見たくなる方も多いかもしれません。
でも、おしりからの出血には、いぼ痔や切れ痔といった良性のものだけでなく、大腸がんなど命に関わる重大な病気が隠れていることもあります。
見た目だけでは、どの病気による出血かを自分で判断するのはとても難しいです。
まずは落ち着いて、
- 血の色(明るい赤? 黒っぽい?)
- 出血の量
- 排便との関係(排便時か排便後か)
- 痛みの有無
などをチェックしてみてください。
少量で一時的なものであっても、出血が繰り返される場合や、下痢や便秘など便通の異常を伴う場合、出血の色が暗い場合には、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
「痔だろうから大丈夫」と自己判断せず、どんな小さな出血でも、まずは専門医に相談してみることが大切です。
早めに原因をはっきりさせることで、安心にもつながります。
おしりの出血は、恥ずかしがらず、ひとりで抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。
おしりから出血したときには『大腸がん』に要注意!

おしりからの出血の中で、最も注意が必要なのが『大腸がん』です。
日本では大腸がんの患者さんは年々増加しており、女性では死亡数の第1位、男性では第2位になっています。
特に40代以降になると大腸がんを発症する人が増えてきます。
大腸がんは、早期発見・早期治療が何よりも大切で、早期であれば内視鏡治療で完治することも可能です。
しかし、大腸がんは症状が出ないことが多く、「おしりからの出血」が、唯一のサインであることも珍しくありません。
以前から排便時の出血は続いていたけれど、「どうせ痔だろう」と自己判断して、継続する出血を放置してしまい、いざ病院を受診してみたら進行がんで見つかるケースがいまだにあります。
「痔だと思っていたけど、実は大腸がんだった」という事態を防ぐためにも、おしりからの出血があった場合は、一度医療機関を受診して相談をすることが重要です。
草加西口大腸肛門クリニックでの【おりしから出血したとき】の診療

「トイレで出血に気づいてびっくりした」「痔かと思うけれど心配で…」といった理由で、当院には日々多くの方が来院されます。
まずは、いつから、どんなタイミングで、どんな色の出血があるのかなど、丁寧にお話をうかがいます。
排便中か後か、出血の量や痛みの有無、下痢や便秘の有無なども大切な情報です。
そのうえで、おなかやおしりの診察を行い、出血の原因がどこにあるのかを確認します。
おしりに原因がある痔(いぼ痔や切れ痔)のこともあれば、大腸からの出血のこともあります。
出血の原因が痔によるものと考えられる場合は、まず軟膏や内服薬などの保存的治療をご案内します。
一方で、大腸からの出血の可能性がある場合には、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をご提案し、より詳しく調べていきます。
「どうせ痔だろう」と思って放置した結果、大腸がんなど命に関わる重大な病気が見つかるケースもあります。
痔と大腸がんは同時に存在することもあるため、しっかり調べることが大切です。
草加西口大腸肛門クリニックでは、おしりとおなかの両方を診られる"トータルケア"を提供しています。
おしりからの出血に気づいたら、恥ずかしがらずに一度ご相談ください。
わずかな症状でも、早期に確認することで安心につながります。
あなたの不安をしっかり受け止め、わかりやすく丁寧な診療を心がけています。